Q:脳動脈瘤ってなに?
Q:脳動脈瘤の種類は?
Q:脳動脈瘤はどうやって見つけるの?
Q:脳動脈瘤を見つけることの利点は?
Q: 脳動脈瘤を見つけることの欠点は?
Q:無症候性未破裂脳動脈瘤の治療法は?
Q:脳動脈瘤が破れるとどうなる?
Q:クモ膜下出血ってどんな病気?
Q:クモ膜下出血になった場合の良くなり方は?
Q:脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血の治療方針は?
Q:脳動脈瘤再破裂の防止の方法は?
Q:脳動脈瘤の塞栓術の利点は?
Q:脳動脈瘤の塞栓術の欠点は?
Q:脳動脈瘤塞栓術の実際は?
Q:脳動脈瘤塞栓術に難易度は有るの?
Q:いったん治療が終われば二度とクモ膜下出血にはならないのですか?

Q:脳動脈瘤ってなに?
A:脳の血管(動脈)の一部が膨らんで弱くなっているところを脳動脈瘤と言います。人は1.5-5%の割合で有していると思われています。そのうちの0.5-3%が破れて症状を引き起こすと言われています。 脳動脈瘤は生まれつき持っているわけではなく、40歳以降に発生すると言われています。脳動脈瘤は血管が枝分かれするところに発生します。発生には血管の壁の弱さと血流、血圧などが関係していると考えられています。
Q:脳動脈瘤の種類は?

A:大きさ、形や原因(嚢状、紡錘状、解離性)、場所などによって分類されています。ここでは最も多い嚢状動脈瘤についてお話しします。小さなものは1-2 mmから大きなものは20-30mmを超えるものがあります。脳血管のある程度大きな場所に出来やすく、前方の脳血管に発生するものと、後方に発生するものに分けられています。

Q:脳動脈瘤はどうやって見つけるの?
A:脳動脈瘤の発見は脳血管を描出する画像診断によって診断されます。MRA(磁気共鳴血管撮影)、CTA(CT血管撮影)、血管造影検査を行うことで脳動脈瘤を見ることが出来ます。MRAは造影剤というお薬を用いることなく検査できるという利点があります。
Q:脳動脈瘤を見つけることの利点は?
A:脳動脈瘤を持っているだけで、なにも症状がない状態の脳動脈瘤を無症候性未破裂脳動脈瘤と言います。破裂をする前に治療を行うことを選択枝として選ぶことが出来るという利点はあります。
Q: 脳動脈瘤を見つけることの欠点は?
A:たとえ脳動脈瘤を見つけても残念ながら現時点においてはどの脳動脈瘤が破裂するのかを診断する手だてはありません。年間の破裂率は2%前後と考えられており、それは100人中2人にクモ膜下出血を起こすと言うことです。逆に98人にはなにも起こらないともいえるのです。しかし、その98人は脳動脈瘤を持っていることを知った上での生活を行わなくてはならなくなり、その精神的負担は大きいと考えられます。ですから積極的に無症候性未破裂脳動脈瘤を探した方がよいと言うことが定説にはなっていません。脳動脈瘤が見つかった場合には治療を行いたいと言うことを希望する場合には脳動脈瘤を探すことは勧められるのでしょうが、その事を理解せずに見つけようとする事は勧められないと思います。
Q:無症候性未破裂脳動脈瘤の治療法は?
A:治療の方法は破裂の場合と同じですが、目的は破裂の予防と言うことになります。必ず破裂するわけでもないので、状況によってはなにも治療をせずに経過を観察するという方法が加わります。また、治療を行う場合の危険性が高いと考えられる場合には経過を観察する方法しか採れないと言うことも起こり得ます。何時どこで破れるか分からないという状況ではありますが、通常は破裂していない状態で十分に考える時間がありますから、納得がいくまで相談されることが必要です。また、緊急を要する状態ではないのでひとつの医療機関だけではなく他の医療機関での意見を聞くことも良い方法です(セカンドオピニオン)。十分に説明を受けて自分の責任で医療機関や治療方針を選択するということが求められる病気です。
Q:脳動脈瘤が破れるとどうなる?

A:脳動脈瘤が破裂するとクモ膜下出血が起こります。脳の血管は脳を取り囲んだように走っています。青いプラスチックに入ったお豆腐を思ってください。プラスチックが頭蓋骨でお豆腐を脳とすると、お豆腐が入っている水が脳脊髄液という液体でその場所をクモ膜下腔と言います。脳の血管は水の中をお豆腐にくっついたように走っていますので、そこに出来た脳動脈瘤が破裂すると水の中に出血することとなります。それをクモ膜下出血と言います。

Q:クモ膜下出血ってどんな病気?
A:出血の程度や様々の条件によりますが突然の激しい頭痛で発症することが多く、その痛みは今までに経験したことのない痛み、バットで殴られたような痛みと表現されます。吐き気や嘔吐を伴ったり、意識が悪くなったりします。脳に対するダメージの程度により手足の麻痺や言語や視覚に関する障害やけいれんなども起こり得ます。突然死の原因の一つでもあります。
Q:クモ膜下出血になった場合の良くなり方は?
A:いったんクモ膜下出血になると病院に運ばれても約三分の一は死亡すると言われています。たとえ命を取り留めても脳が受けるダメージにより約三分の一は比較的強い程度の神経症状を残します。残りの三分の一が比較的軽い症状から無症状の状態で生活できるようになります。
Q:脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血の治療方針は?
A:状況にはよりますが、一般的には脳動脈瘤に対する再破裂の防止を行います。再破裂が起こると更に症状が悪化し、死亡率が高くなることが分かっているからです。クモ膜下出血自体はすでに起こっているのでその状態をなくすことは出来ません。上手く再破裂の防止が出来た場合でも脳血管の攣縮による脳梗塞、水頭症や正常圧水頭症などの晩期障害が起こり得ますのでその対応が求められることとなります。
Q:脳動脈瘤再破裂の防止の方法は?

A:脳動脈瘤内に親動脈から流入する血流を遮断することを目的とした治療を行います。脳神経外科的に開頭し脳動脈瘤と親動脈の間をクリップで留める方法をネッククリップ術と言います。この方法はもっとも広く行われている方法です。もう一つの方法は脳神経血管内治療や脳血管内手術と言われるもので血管の中から細い管を脳動脈瘤の中に入れ、その管を通してプラチナで出来た柔らかいコイルを埋め込んでしまう方法です。これを塞栓術と言い、比較的新しい治療方法です。

Q:脳動脈瘤の塞栓術の利点は?

A:開頭することなく治療を行えるので、脳やくも膜を傷つけることなく治療を行えます。その結果、治療が上手く行えた場合の身体的な回復が良好で、術後の痛みも少なくてすみます。短期間の観察においてはネッククリップ術と同等もしくはそれ以上の好結果が得られたという報告が数多く発表されています。

Q:脳動脈瘤の塞栓術の欠点は?
A:脳動脈の中を通す細い管(カテーテル)の長さは150 cmあり、その先端部分で数mmの脳動脈瘤の中での操作を行う非常に繊細な作業が要求される手術です。カテーテルなどが脳動脈瘤や脳血管を突き抜けて出血性の合併症を起こしたり、血管内で血栓を形成して脳梗塞を起こしたりする危険性があります。また、術後のコイルの安定性や脳動脈瘤の状態を知るために経過を追って観察する必要があります。
Q:脳動脈瘤塞栓術の実際は?

A:足の付け根の太い動脈(大腿動脈)に針を刺して、それを利用して比較的太いカテーテルを頸部の血管まで誘導します。そのカテーテルの中を通して細いカテーテルを頭蓋内の病変まで導き、その細いカテーテルの中を通してプラチナで出来ている非常に柔らかなコイルを脳動脈瘤の中に入れていきます。通常は全身麻酔下に治療は行われますので痛みはほとんどありません。

Q:脳動脈瘤塞栓術に難易度は有るの?
A:有ります。ひとつは脳動脈瘤の中にカテーテルを誘導するのが困難な場合です。その原因には動脈硬化で血管の蛇行が強いことと親動脈からの動脈瘤の向きです。もう一つは脳動脈瘤の形と大きさです。コイルを入れていく場合に動脈瘤の入り口にくらべてそのドームの大きさが大きいといったん入れたコイルが外に出てくることが少なく治療がしやすいのです。小さすぎても大きすぎても治療に難しさが出てきます。入り口が小さく適当な大きさの脳動脈瘤が治療しやすいのですが、そのようなものばかりではありません。
Q:いったん治療が終われば二度とクモ膜下出血にはならないのですか?
A:残念ながらそうとはいえません。ひとつの動脈瘤を持つ人が他の動脈瘤を持つことがあります(多発動脈瘤)。また、いったん治療がうまくいっても治療が行われた部位やほかの部位に新たに脳動脈瘤の発生がおこることがあります。